【音盤銘盤】『ビートルズ・フォー・セール』(The Beatles) '64
4枚目のアルバム。デビューしてから僅か2年しか経っていないのに曲調が円熟化している。
![]() | ビートルズ・フォー・セール (2009/09/09) ザ・ビートルズ 商品詳細を見る |
R&Rのカヴァーでは本格的な印象を与える曲を作る一方、オリジナルでもカントリー風のギターソロを曲中に挟むなど、芸が細かくなりつつあるのが分かる。デビューして2年という極めて短い期間しか経っていないのにかかわらず、全体的に落ち着いた、既にベテランの風格すら漂う作風に仕上がっている。
"No reply","I'm a loser" Johnの作曲によるこの2曲は、完全に只のアイドル・グループを超える内省的な歌詞で歌われている。既にJohnはライヴとレコーディングに明け暮れる生活に疲れを見せ始めている様子が興味深い。2年後のライブ活動停止が予見される出来になっている。
"Rock and roll music","Mr. Moonlight","Kansas City","Everybody's Trying to Be My Baby" 一連のカヴァー曲のレベルはビートルズでも随一のものである。Rolling Stonesのように、いかに黒人に近づくかに熱心なグループと対照的に、軽快に歌い上げ演奏するのがビートルズ流。
”Baby's in Black" 全体的に気怠いトーンで流れる曲。65〜66年のライブではよく演奏されていた。
"Eight Days a Week" イントロのフェード・インが印象的。
"Every Little Thing" ティンパニを取り入れたユニークな曲。そのせいか壮大なイメージがある曲。
このアルバム、名曲揃いで所謂「はずれ」な曲は少ない。どれも良いので、これが一番と言える曲を選ぶのに苦労するのが欠点かもしれぬ。