洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『スモール・フェイセス』 (Small Faces) '66

The Whoと並んでモッズのエースと評されるSmall Facesの記念すべき1st。タイト&シャープでスピード感溢れる演奏が聴ける。


スモール・フェイセス+5(デジタル・リマスター)スモール・フェイセス+5(デジタル・リマスター)
(1996/11/25)
スモール・フェイセス

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60年代のブリティッシュ・ロックについては、めぼしい所(Beatles,RollingStone,Who,Kinks)は当ブログで一通り取り上げてきた。しかし、忘れてはならないグループはまだまだ存在する。今回取り上げるSmall Facesはその1つである。彼らはモッズ系の代表格であり、当時のロンドン界隈の流行の中で生まれた稀有なバンドである。モッズ・ブームの影響を受けたバンドは他にThe Whoも挙げられるが、こちらは戦略的にモッズを取り入れて「作り上げられた」感が強い。一方、Small Facesはメンバー自身がモッズのコミュニティの出自であり、まさにモッズの流行から生み出されたグループと言える。

筆者がSmall Facesを聴き始めたのは高校2年生の頃と記憶しているが、スピード感溢れる軽快な演奏にRollingStonesやThe whoとはまた違った魅力を感じた。アルバム・ジャケットに写るメンバーのファッションもお洒落であり、アイドル的な人気を当時博していたのが伺える。

音楽面での大きな特徴はグループのリーダー格でギター兼ヴォーカルのSteve Marriottの歌唱力、演奏力もさることながら、キーボード(ハモンド・オルガン)奏者を正式メンバー(Ian McLagan)として登用している事である。キーボードないしピアノは他のグループでは補佐的な扱いをされる事が多く、セッションミュージシャンで事足りるケースが多いのである。Rolling Stonesでも専属ピアニストとしてIan Stewartという人物はいたのであるが、デビュー直前に正式メンバーからは外される事になった。(ただし、Stonesの場合はピアニストの重要性云々というよりはIan Stewart氏の容貌がグループの雰囲気に合わないという身も蓋も無い理由だったそうである。)これに対してSmall Facesでは多くの曲でキーボードを前面に取り上げている。その為か同年代のグループの中でも非常に洗練された曲に仕上がっているのが特徴である。

代表的な曲を幾つか紹介する。

"Shake" ソウル/R&Bの大物Sam Cookeのカヴァーからこのアルバムは始まる。Steveのヴォーカルとギターの力強さが存分に表れている名カヴァー。キーボードもきちんと見せ場があり、Small Facesの特徴が凝縮された作りになっている。

"Come on Children" 当時のライヴの熱狂が伝わってくるメンバーの共作。ドラムのKenney Jones、ベースのRonnie Laneも競う様に演奏している様が印象的。

"You'd Better Believe It" コーラスワークが印象的な軽快な曲。張り上げるように歌うSteveが何ともいとおしくなる名曲。

"Whatcha Gonna Do About It" 記念すべきデビュー・シングル曲。Steve含めメンバー全員が如何に黒人の演奏に近づくかを熱心に考えていたかが分かる1曲。

"Own Up Time" スピード感溢れるインストゥルメンタル。Ianのキーボードが光る逸品。後のハードロック・ヘヴィメタの原点になる1曲である。

"You Need Loving","E Too D" 両方ともRonnieとSteveによるオリジナル曲であるが、黒人のR&Bミュージシャンと全く遜色ない渋さを備えている所が凄い。デビュー1〜2年目でこれだけの風格を備えているのは只者ではないと思う。

"Sha-La-La-La-Lee" 全英シングルチャートで3位を記録したヒットシングル。コーラスがキャッチーであり、ポップ寄りの出来である。