洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『フロム・ザ・ビギニング』 (Small Faces) '67

モッズ・ムーブメントの人気グループの2ndアルバム。大ヒットシングル"All or Nothing"も収録。


フロム・ザ・ビギニング(デジタフロム・ザ・ビギニング(デジタ
(1996/11/25)
スモール・フェイセス

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1965年にデビューして以来、ロンドンのモッズ・ムーブメントの中で中心的な存在となり、数曲のシングルヒットと1stアルバムをリリースするSmall Facesであるが、より創造的な環境を求めて67年にローリング・ストーンズのマネージャーであったアンドリュー・オールダムの立ち上げたレーベル、イミディエイトに移籍する事になる。そういった中での慌ただしい状況の中で急遽リリースされたアルバムがこの2ndアルバムである。

このように書くといかにもやっつけ仕事で作られた感がするが、侮るなかれ、当時大ヒットして全英チャート1位になった"All or Nothing"を始め、当時のライヴの熱狂が手に取るように分かる名曲がずらりと並んでいる。

"Runaway" Del Shannonのカヴァーで始まる何とも渋い選曲。R&B指向の強い彼らとは別な意味で熱気が伝わってくる名ナンバー。

"My Mind's Eye" 1stアルバムの渋いブルース寄りの曲から一転して、きらびやかなトーンのSteve Marriott/Ronnie Laneによるオリジナル曲。サイケデリック・ムーブメントの始まる時代に即応した華やかな曲調である。コーラス・ワークでも多彩な才能を見せる名作である。

"My Way of Giving" Steve Marriottの歌い方が後年のRod Stewartを彷彿とさせるバラード。後半のシャウトの仕方も気合いの入り方が全く異なる。当時の白人のミュージシャンでこれだけの力量で歌えたヴォーカリストと言えば、AnimalsのEric Burdonくらいのものであろう。

"All or Nothing" Small Faces随一の大ヒット曲。全英1位を記録した1966年のヒット作である。ギターのアルペジオハモンド・オルガンの淡々としたリズムの中で切々と歌い上げるが、中盤から喉から振り絞るように歌う所がハイライトである。僅か3分程度の曲なので、今聴き直してみるとあっという間に終わってしまう様に感じて、ちょっと物足りない印象を受けるかもしれない。当時のリスナーはこれ位のボリュームでも相当盛り上がったのだろう。

メンバーの移籍によって急遽作成されたアルバムなので、メンバーの意向は殆ど入っておらず、専ら当時のレーベルであるDeccaの裁量で作られたのであるが、今聴き直しても決して悪くない選曲になっていると思う。シングルヒットあり、秀逸なカヴァーあり、意欲的なオリジナル曲ありとバランス感覚のあるラインナップに仕上がっている。この手の編集盤も後年になって正式な形でリイシューされているのは、60年代のグループを正当に評価する上で大変大事な事である。一部のマニアの間でコレクターズ・アイテムとして高値で取引されるようなレアなコンテンツにならずに、手頃な価格で多くの人が手に入れられる状態になっている事で初めて名盤の良さが伝わると考えている。