洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『オグデンズ・ナット・ゴーン・フレイク』 (Small Faces) '68

Small Faces初のコンセプトアルバム。LP盤では円形のジャケットも話題になった随一の傑作。

Small Faces オグデンズ・ナット・ゴーン・フレイク

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60年代中盤に流行となったコンセプトアルバムの影響はSmall Facesにも及ぶ事になった。このアルバムでは前半部では彼らの地元であるロンドンの下町(コックニー)のエピソードを盛り込んだ楽曲が並び、後半部では"Happiness Stan"という「月夜の夜に、月を捕まえようと旅に出た男」の物語が展開する。このストーリーはロンドンの下町に語り継がれているそうで、彼らの出自の物語を基に曲作りを行っている。また、紙巻きタバコの缶にのデザインにヒントを得たとされる円形のジャケットも珍しく、話題性に富んだ一枚である。

"Ogdens' Nut Gone Flake" 幻想的なトーンのインストゥルメンタルからこのアルバムが始まる。サイケデリック・ブームの影響を受けた感が大きい。ストリングスも中盤から加わって大変豪華なオープニングである。

"Afterglow of Your Love" Small Faces随一の名曲と言えるバラード。アコースティックギターハモンドオルガンの重層的なリズムが心地よい逸品である。終盤で一旦フェードアウトして再びリズムを繰り返す手法(?)は一見素朴だが、インパクトのある仕上がりになっている。

"Long Agos and Worlds Apart" Ian McLaganの作曲、ヴォーカルによる軽快なナンバー。彼は後年Rod StewartやRolling Stonesのサポート・メンバーとして活躍するが、その多彩な才能の一面を垣間見る事ができる曲。

"Rene" メンバーの出身であるロンドン下町の下世話な雰囲気が分かる隠れた名曲。後半(B面)のストーリーにも繋がる内輪受けの強いトーンが印象的である。

"Song of a Baker" 初期から続くギターのリズム感が心地よい曲であるが、歌詞の内容はなかなか辛辣である。労働者階級の庶民の生活を切々と歌う所はアルバム前半のピークかもしれない。

"Lazy Sunday" シングルでもヒットした名作。酒でも飲みながら気楽に作った感じのトーンが楽しい。中盤にStonesの"Satisfaction"が聴こえるのはご愛嬌でしょうか。ルーズなノリの曲調は後のFacesに通づるものがあると思う。

"Happiness Stan" ここからが当時のLPのB面。ナレーションを盛り込んだ意欲的なコンセプトアルバムの後半である。

"Rollin' Over" 「月を追う男」のストーリーからやや外れた歌詞と曲調であるが、コンセプトの中でも巧く場面展開の役割を果たしていると思う逸品。ギターのカッティングが鋭く、この曲単体でライヴで演奏される事も多い。

"The Hungry Intruder","The Journey","Mad John" ナレーションを間に挟みながら進んでいく展開は当時としては珍しいものであったと思われるが、初期のギターバンドとしての一面と、サイケデリック・ブームの中で装飾を施しながら進んでいく面とが巧く噛み合っていていつ聴いても楽しい。

"HappyDaysToyTown" ギターの音色とルーズなオルガンのトーンが相まってのどかなリズムでこのアルバムは終わる。この曲の様なくだけたノリは70年代に入ってもFacesに引き継がれていく事になる。

Small Faces初のコンセプトアルバムとなった"Ogdens' Nut Gone Flake"であるが、実はアルバムリリースの翌年にヴォーカリストのSteve Marriottがグループを突如脱退、Humble Pieを結成してしまう。この為、活動期間中のオリジナルアルバムはこれが最後という大変残念な結果となってしまった。やはり60年代前半のブリティッシュ・ビートブームの中では後発であった所為で同年代の多くのグループ、例えばBeatles、Rolling Stoneに先を越されていた感は拭えなかったと考えられる。しかしメンバーの多くは70年代に入ってもFaces,Humble Pieあるいはソロとして活躍を続ける事になる。その辺は後程このブログでも書いていく予定である。また、70年代後半のパンク/ニューウェーブ系のミュージシャンへの影響は絶大であり、Paul WellerはSmall Facesのアルバムを愛聴しているそうである。そういった点では活動期間は短いものの、Small Facesはもっと注目されてしかるべきグループなのではないかと考えている。