【音盤銘盤】『アニマル・トラックス』 (Animals) '65
オリジナルメンバーによるAnimalsのラストアルバム。R&Bのカヴァーが優れた名盤。
英国のミュージシャンによるR&Bのカヴァーは60年代初頭においてある種流行のようになっていた。AnimalsはヴォーカルのEric Burdonとピアノ&オルガンのAlan Priceによるアンサンブルが極めて秀逸であったが、その他のグループも数多くのカヴァー曲を取り上げている。
1stアルバムで取り上げた"She said yeh","Around and around"はRolling Stonesもカヴァー、"Boom boom"はYardbirdsがカヴァーしている。本作の"I ain't got you"はYardbirds、"Roadrunner"はPretty Thingsがカヴァーしている。その他にも当時はアルバムに収録されなかったシングルカット曲、
"Don't let me be misunderstood"は後年、Elvis Costelloによってもカヴァーされる等、R&Bカヴァーの系譜は長く続いていく事になる。
このように同年代の中で(曲によっては後年に亘って)数多くの作品がカヴァーされるようになると、各々のグループの間で「聴き比べ」なるものをしてみるのも一興である。
グループによって得意な声質、演奏形態が異なるのでカヴァーの出来上がりも優劣様々あるのが、なかなか面白い。
例えば今回紹介したAnimalsであればなんといっても迫力あるヴォーカルとキーボードの構成が魅力的であるし、Rolling Stonesであれば、Mick Jaggerによる張りのあるヴォーカルとKeith RichardsのChuck Berry譲りのストレートなギター、Brian Jonesの哀愁あるブルースハープの演奏が見事である。
Yardbirdsならば、Keith Relfの線の細いヴォーカルに加えてEric Clapton,Jeff Beckといった名ギタリストによる多彩なフレージングが何より聴き所である。
"Hallelujah I Love Her So" ヴォーカルとキーボードの掛け合いが秀逸な名作。
"Don't let me be misunderstood" 「朝日のあたる家」に続く大ヒットシングル。60年代らしい郷愁を感じさせる一曲。
ヒット曲が続き前途洋々に見えたAnimalsであるが、Alan Priceの突然の脱退によりオリジナルメンバーによるアルバムは僅か2枚である。これ以降もEric Burdonを中心としてグループはメンバーチェンジを重ねながら続いていくことになる。後の作品はまた別の機会に紹介したいと思う。