洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(The Beatles) '67

「コンセプト・アルバム」の嚆矢となった作品。ロック・ミュージックを芸術の域まで高めたアルバムとも言える。

ビートルズにとって、そしてロックミュージックにとって一大転換点となった作品。1枚のアルバムで一貫したテーマで楽曲を構成する「コンセプト・アルバム」なる概念を打ち出した成果は絶大であった。


サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
(1998/03/11)
ザ・ビートルズ

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「コンセプト・アルバム」の先駆けとなったアルバムである。現在では一つのアルバムに一貫したテーマを持たせて音楽を構成する方法論は決して目新しいものではないだろうが、このアルバムがリリースされた当初はかなり画期的な事であった。当時のアルバムはシングル盤のリリース後にそれらの曲と付け合わせ程度のカヴァー曲を足したもので2度おいしく儲けよう、といった魂胆で作られるものが多かったので、この「コンセプト・アルバム」はロックの歴史において極めて重要な発明と言っても差し支えない。

架空のバンド「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のショウという体裁で曲が構成されており、オープニングのテーマ曲から始まり、"With a Little Help from My Friends"へクラシックの組曲のような流れをもって展開していく。アルバムの最後に再度テーマ曲が取り上げられた後、アンコールとして"A Day in the Life"で幕を閉じる。アルバムの一連の流れをエンターテイメント・ショウとして作り上げるやり方は今までに無いものである。

ここまで持ち上げる内容を書いてきたが、実を言うとこのアルバム、個人的にはあまり好きではない。勿論、名作である事は理解している、曲の完成度も高い事は聴いてみれば分かる。でも、今聴いてみるとなぜか重苦しい気分になっていくのである。サイケ・ムーヴメントの時代の中で作られた曲は現在聴き直してみると、きらびやか過ぎるように思うのは私だけだろうか。聴き終わった後にブルーな気分になる。何だか後味の悪さを否定できないのである。

なぜそんな気分になるのか考えてみると、どうやらこの時期あたりからロックの持つ気軽さ、あっけらかんとした楽しさが無くなっていくのに気がついたからかもしれない。ビートルズ自体がこの辺から遠い存在になっていくのが分かるのも原因の一端であるような気がする。

このアルバムで1曲挙げるとすると、"A Day In The Life"が白眉であろう。エンディングのオーケストラからピアノの余韻を残してフェードアウトする箇所は緊迫感が抜きん出ている。