洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『キンクス』(The Kinks) '64

Stonesについて60年代の作品はほぼ取り上げることができたので、今回からKinksを紹介しよう。彼らのデビュー・アルバムであり、ロック史に残る超有名ヒット曲"You Really Got Me"が収録されている。


キンクス+12キンクス+12
(1998/06/24)
ザ・キンクス

商品詳細を見る

60年代のブリティッシュ・ロックを語る上で欠かせないグループは幾つか挙げられるが、Kinksも当然その中に含まれるであろう。しかし、こと日本においては決して高い評価がされているとは言い難い状況である。欧米ではBeatles,Rolling Stones,Who,Kinksを合わせて「4大ブリティッシュ・ロック」グループとして一定の高い評価を得ているそうだが、国内では未だに「知る人ぞ知る」とか「B級グループ」としてマイナーな存在として扱われているのが現状である。(この辺りの扱いはWhoも同様である。)wlblaboがKinksを聴くようになったのは高校入学して間もない頃(1993年)であるが、その当時は周囲の友達でも聴いている人は皆無であった。"You Really Got Me"を聴いた事がある人はいたものの、それはヴァン・ヘイレンのカヴァーだったりする。オリジナルのKinksについては「名前だけ知っている」程度のものだったりと知名度が芳しくない印象。しかし、1993年当時は約10年ぶりに来日してライヴを行ったり、結成30周年という事で彼らが60年代に在籍していたパイ・レーベル時代のアルバムが再発売されたりといった流れの中で徐々に再評価がされつつあった時代であった。もう少し後になるとブリット・ポップの時代になって、OasisBlurの原点として扱われることも増えて更に注目される事になる。

僕がたまたまストーンズ関連の書籍を読んでいる中でKinksというグループを知り、ちょうどアルバムがリイシューされた時期に彼らの曲を手軽に聴けるようになった事は今振り返ってみると非常に幸運な事だったと思っている。

ここから曲紹介。

このアルバム、全14曲のうち6曲がグループのリーダーであり、多くの曲でヴォーカルを務めるRay Davies御大による作詞作曲である。これは当時としてKinksが結構オリジナル曲指向の強いバンドであったと言える。Beatlesの1stアルバムが半数でオリジナルだったのは別格としても、Stonesの1stで2〜3曲程度しかオリジナル曲が無かった事を考えると、Kinksが、正確にはRay自身がシンガーソングライターとして世に出たいという意識が強かったようである。後年、"Kinks"というバンド名に違わぬ非常にユニークな視点で歌を作る原点がこのアルバムにあると言える。

"Beautiful Delilah" 当時若干17歳のDave Daviesがリード・ヴォーカルの曲からこのアルバムは始まる。チャック・ベリーのカヴァーであるが、Stonesのような渋くて重たい雰囲気は無く、いたって軽快なテンポで流れていくところが特徴的である。コーラスのハモり方も粋で良い。

”So Mystifying”,"Just Can't Go To Sleep","I Took My Baby Home" Rayのオリジナル曲が続く。当時としてはオーソドックスなラブソングであり、後のヒネた目線の歌詞はまだ見られない。初々しいリズム感である。

”Long Tall Shorty” Daveが鼻にかかった歌い方をしているのが面白い。彼ら流のR&Bの解釈なのだろうか?ブルース・ハープの演出が秀逸な渋好みのカヴァー曲。

"I'm A Lover Not A Fighter" これもDaveがリード・ヴォーカルをとるR&Bカヴァー。Stonesほど黒っぽい、ワイルドなノリでない所がKinksのキャラクターかもしれぬ。

"You Really Got Me" ヴァン・ヘイレンもカヴァーしたKinksの、そしてブリティシュ・ロックの名曲中の名曲。40年以上前の曲だが全く古さを感じない。このアルバムの中でも曲のクオリティが際立っている。ギター・ソロでDaveが掻き鳴らす姿が目に浮かぶ様。

"Cadillac" ボ・ディドリー風の小刻みに揺れる様なリズム感が心地よい。当時のKinksのR&Bに対する嗜好はStonesと結構かぶっているので、聴き比べてみると面白いかもしれない。

"Bald headed woman" ブルース・ハープとギターのトレモロで徐々にに盛り上がっていく感じが格好良い。ちなみにこの曲、後のLed Zeppelinを結成するJimmy PageDeep Purpleのキーボードを担当するJon Lordが参加している。"You Really Got Me"のようにヘヴィメタに後年カヴァーされる曲があったりとこのアルバム、なにかとハードロックに縁が深い。

”Revenge” Daveのギターの活躍が目覚ましいインストゥルメンタル曲。この辺りもハードロックへの影響は計り知れない所である。

”Too Much Monkey Business” 再びチャック・ベリーのカヴァー。YardbirdsもClapton在籍時にこの曲の秀逸なカヴァーを残しているが、それと比べると軽快(むしろ安っぽい?)な所がKinksらしい。

”I've Been Driving On Bald Mountain” "Bald headed woman"の流れを汲む曲で、こちらはDaveがヴォーカル。

"Stop Your Sobbing" ニューウェイヴの時代にPretendersのChrissie Hynde(クリッシー・ハインド)がカヴァーする事になるが、このオリジナルも名曲。Rayのボソボソした覇気無さげな唄い方と曲調がマッチしている。

"Got Love If You Want It" Kinksの1stアルバムのラストを飾る佳曲。この時期特有のトレモロ奏法で徐々に盛り上げていく所がいい。何度聴いてもワクワクする。

このKinksの1stアルバム、後世への影響力ということでは非常に侮れない。"You Really Got Me"のヴァン・ヘイレンは勿論、"Stop Your Sobbing"のPretendersもまた然り。更には70年代に入って活躍する2大ハードロックの巨頭、Led ZeppelinDeep Purpleのメンバーがセッション・ミュージシャンとして参加していたりと興味が尽きない。