洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『ベスト・アンド・コレクタブル・キンクス』/『パイ・コンプリート・シングル・コレクション』(The Kinks)

Kinksのパイ・レーベル時代のシングル盤を中心にアルバムから漏れている曲を紹介。

パイ・レーベル期のベスト盤。


ベスト・アンド・コレクタブル・キンクスベスト・アンド・コレクタブル・キンクス
(1993/12/16)
ザ・キンクス

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パイ・レーベル期のシングルA面B面を網羅した編集盤。Kinks版"Past masters"。


パイ・コンプリート・シングル・コレクション 1964-1970パイ・コンプリート・シングル・コレクション 1964-1970
(1993/12/16)
ザ・キンクス

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上記の2つはKinks結成30周年時のリイシュー版で発行されたものなので、現在(2014年)では実質廃盤となっている。その代わり、近年のリイシュー盤ではボーナス・トラックとして各アルバムに同時期のシングル盤の曲が収録されているので、そちらを参照されたい。

シングル曲にも魅力的な曲が多数あるので、パイ時代の締めくくりとしてここに取り上げる。

"All day and all of the night"('64)・・・"You really got me"に次ぐ大ヒット曲。個人的には"All day and all of the night"の方がギター・ソロがこなれてて好き。スリー・コードの定石といえる曲。高2で初めて聴いて痺れた。

"Louie Louie"('64)・・・アメリカのガレージ・パンクの元祖であるキングスメンのカヴァー曲。"You really got me"への影響はギターを聴けば明らか。キングスメンの演奏している映像をみたことがあるが、kinksのバージョンよりドラムのインパクトが強かった。

"Set me free"('65)・・・初期Kinksのスリー・コードをマイナー調にするとこうなる、といった感じの曲。後のフォーク・ロックの影響も垣間見える。

"A well respected man"('65)・・・地味だがKinksの歴史上極めて重要な曲。今までのスリー・コードから脱却し、社会風刺を盛り込んだのが特徴。取るに足らない庶民の生活とありふれた日常を淡々と歌い上げる曲なんて売れると思ったのだろうか?

この曲を境にKinks独自のシニカルかつほのぼの路線を突き進む事になる。当時の全米シングルチャートで13位を記録したそうな。Rayもこれで随分勇気付けられたに違いない。

"I need you"('65)・・・イントロのギターの歪み具合はガレージ・パンクの魁。サビのギター・ソロの強引さは当時のロック黎明期の若々しさが漲っている。シングルB面にはもったいない曲。

"See my friend"('65)・・・Kinksで初めてシタールを取り入れた曲。恐らくStonesの"Paint it black"やYardbirdsの"Shapes of things"の先を行く作品。Kinksの先見性の高さが伺える。

"Dedicated follower of fashion"('66)・・・流行を追っかけてばかりいる薄っぺらな輩を嘲笑した曲。当時のラヴソング主体のシングルの中でひときわ異彩を放つ。一ギター・バンドから脱却しつつあるのが分かる。

"Sitting on my sofa"('66)・・・個人的に「シングルB面に置くにはもったいない曲」第1位である。キンキー・サウンドの完成形がここに存在する。ライヴで是非とも再現してほしい曲。

"I'm not like everybody else"('66)・・・Daveがリード・ヴォーカルのフォークロック調の曲。いかにも"中二病"というか自意識過剰な所が若々しくって好きである。Bob Dylan風の歌い方が新鮮、これもシングルB面にはもったいないなぁ。

"Dead end street"('66)・・・Crashの"London Calling"はこの曲に影響を受けたのは有名な話。淡々とリズムを刻むところが心地良い。歌詞全体に漂うのは"貧困"。つくづくイギリスは良くも悪く日本の数十年先をいっているのが分かる曲。歌詞の重苦しさと曲の軽やかなリズムがミスマッチなのがキンクス流。確かトラジ・コミックと呼ばれておなじみの筈。

"Big black smoke"('66)・・・教会の鐘の音から始まる所が印象的。後のロックオペラ時代に先駆けた実験的な曲。エンディングでDaveの声がかぶせているのは遊び心から来たものだろうか?ロックが商業化される前ののどかさが残ってる。

"Autumn almanac"('67)・・・Rayの故郷のマスウェル・ヒルに捧げた曲。これもどこかローカルな佇まいを見せる曲。晩夏から秋に季節が移り変わる時に聴くと切なくなるのは私だけ?

"Days"('68)・・・ヴィレッジ・グリーン時代の名曲。この頃のRayの制作意欲の高さが窺える。曲としての出来が良過ぎるが故にアルバムに収録するかシングルでリリースするか苦慮したのではないだろうか。当時はシングルとして発売されたが、アルバムに収録されたら何曲目に入るだろうか?

"She's got everything"('68)・・・キンキー・サウンドが懐かしくなったのだろうか?久し振りにギターをメインに持ってくる。シングルB面の粗削りな曲だが、個人的には凄く好きである。

"Plastic man"('69)・・・"Well respected man"の延長にある曲。平穏無事な生活を送るごくありふれた人々を歌にするのはキンクスお家芸だが、その中でもこの曲の完成度はもっと評価されて然るべきである。畳み掛けるコーラスは秀逸。

"King kong"('69)・・・ビブラートがかかったヴォーカルがT-Rexマーク・ボランを連想させる。シングルB面のユニークな曲。リズムがCreamの"Sunshine of your love "に似ている気がするのは私だけだろうか?

"Mindless child of motherhood"('69)・・・シングルB面に置くには勿体無い曲。当時のDaveのフォーク・ロック志向、殊にByrdsへの憧憬が如実に現れている曲。エンディングで12弦ギター風のアレンジでダビングしている所が職人技。

"This man he weeps tonight"('69)・・・これもシングルB面には惜しい曲。Byrdsの影響をモロに受けているのが分かる。Daveのヴォーカル曲の中では上位に入る隠れた名曲だと思う。