洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『トミー』(The Who) '69

The Whoの代表作にして「ロック・オペラ」という新ジャンルを開拓した点で、ロック史においても傑作と呼べる作品。壮大な作品に仕上がっている。


トミートミー
(2012/04/25)
ザ・フー

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60年代後半のThe whoはこのアルバム「トミー」の制作に全精力を傾けていたと言っても過言ではないだろう。

目・耳・口が不自由な三重苦を背負った少年"Tommy"が主人公のストーリーをアルバム全体で表現している。これはグループのリーダー格であるPete Townshendの少年期からの孤独・苦悩を反映したものであり、当時傾倒していたインド人の導師や宗教的な価値観も多分に影響している。

アルバムの各曲で繰り返される"See me, feel me, touch me, heal me"のフレーズは印象的で壮大さを増している。

楽曲の構成はクラシックの影響が大きい。序曲から始める展開、ギターのフレーズのリフレインの演奏、ホーン・セクションの導入など聴き所が満載である。

ストーリーの詳しい内容はここで説明するとネタバレになってしまうし、他のサイトでも様々な事を書いている方が大勢いるので敢えて書かない事にする。

高校生の時、僕は初めてこのアルバムを聴いたが、ロックでこれだけ壮大な表現が出来る事に感動したのを覚えている。

歌詞カード片手に一曲一曲聴きながら主人公の少年が成長していく過程を追っかけていたのが懐かしい。

しかしストーリーは難解、というより抽象的な所が多く、話題が所々散漫になっていたりして決して分かり易い物語にはなっていない。

恐らくキリスト教やインド人導師、ミハー・ババの影響が大きいせいで日本人には理解し難い壁があるように感じてしまう。

同時期にリリースされたKinksの「アーサー」の方がよっぽど地に足がついた感じがして分かり易いように思う。これは今もって変わらない。

「アーサー」の小市民的で、身の丈にあった目線で語られるストーリーと比べると「トミー」は語られる時の視点が何だか凄く高い位置にある気がする。

だからいつまでも理解し難いもどかしさが「トミー」にはつきまとう。そこがまたこのアルバムの魅力なんだと思う。

各曲の説明は私以外に様々な人がブログで書いているようなので、敢えて説明しない事にする。

一曲だけ紹介するならば、”Pinball Wizard”は秀逸である。"Tommy"の代表曲と言える。イントロの短いリズムを繰り返すフレーズが印象的。フラメンコの影響だろうか。

たまには一曲一曲紹介するのではなく、ざっと概観だけ語るのも良いかもしれないなぁ。