洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『フォー・ユア・ラヴ』/『ハヴィング・ア・レイヴ・アップ』 (The Yardbirds) '65

久しぶりにBritish Rockから60年代の代表的なグループを取り上げてみる。ハードロックへの布石となったグループ、Yardbirdsである。


フォー・ユア・ラヴ+7フォー・ユア・ラヴ+7      
(2002/03/21)
ザ・ヤードバーズ

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ハヴィング・ア・レイヴ・アップ+16ハヴィング・ア・レイヴ・アップ+16
(2002/03/21)
ザ・ヤードバーズ

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Yardbirdsは1962年前後から活動を開始しているので、Beatles,Rolling Stonesとほぼ同年代である。ロックを聴く人の中でもYardbirdsと言えば、かの有名な「3大ギタリスト」(Eric Clapton,Jeff Beck,Jimmy Page)を輩出したバンド、と連想する事が多いであろう。あたかも「ギタリスト養成所」の様な扱いを受ける事が多く、Yardbirds単体でスポットライトを当てられる機会はあまり無いような気がしている。筆者は高校生の頃にYardbirdsの代表曲を集めた編集盤をよく聴いていたが、ギタリスト3名の技量もさることながら、グループとしても技巧的で多彩な音楽性を持っているバンドであると認識している。未だに過小評価されてるグループの代表であると考えている。

当時の代表的な曲を幾つか紹介する。

”Heart full of soul” 邦題は「ハートせつなく」。邦題がついている所をみると日本でもシングル・カットされて発売されていたのであろうか。Jeff Beck加入後の第1弾シングルとして発売された曲。ギターの音色がシタールのように歪んで何とも幻想的。この当時KinksのRay Davis、Rolling StonesのBrian Jones、BeatlesGeorge Harrison等、様々なミュージシャンがシタールのようなインド音楽を取り入れていたが、その先駆けとも言える作品である。

"For your love" Eric Clapton在籍時の最後のシングルとして発売された曲。ハープシコードの高い金属音が曲全体に広がっているのが印象的。意外とYardbirdsのシングル盤はR&Bの渋いノリの曲は少なく、この手のポップな軽い曲調のものが多いのは、もっと注目されて良いであろう。Keith Relfの線の細いヴォーカルともマッチしている。

"The train kept a-rollin'" Yardbirdsの代表的なカヴァー曲。ロカビリー・バンド、ジョニー・バーネット・トリオの代表作である。Yardbirdsのバージョンも軽快、かつスピード感ある曲調に仕上がっていて、Keith Relfがブルース・ハープを途中で挟んだり、Jeff Beckの時に叫ぶ様な、時にうねる様なギターの変貌ぶりが秀逸である。1965年にして後のハードロックを先取りするかの様なアレンジを施す事が出来たのは凄い。当時のグループの中でも曲の構成力、展開力では群を抜いている。後のAerosmithもカヴァーしているが、このYardbirdsのバージョンをほぼ踏襲したものになっている。

ちなみにYouTubeJimmy Page時代のものです。。

"Shapes of things" これもJeff Beck時代のシングル盤として発売。序盤は淡々としたリズムで進んでいくが、半ば過ぎで急激にシタールを模した幻想的なギター・ソロが割り込んでくるのが面白い所。この時代、多くのグループが競う様に革新的な取り組みを行っていたが、Yardbirdsも例外ではない。のちにJeff Beckが自らの1stソロアルバム「Truth」でも取り上げているが、こちらはより洗練された作風に仕上がっている。

"Good morning little schoolgirl" Eric Clapton時代の代表曲。Keith Relfの声が甲高いので、この手の軽快なアメリカン・ポップ調の曲は馴染み易い。ギターソロもJeff Beckとは対照的にゆったりとリズムを刻むように進行するのがClaptonらしい。同時期に発売された「Five live Yardbirds」でも取り上げられている。

"I'm a man" R&B調の曲の中では代表作とも言える。もとはボ・ディドリーの作である。ブルース・ハープの巧さでは同世代のバンドの中では随一、終盤でのギターと競う様に演奏する箇所は見せ場である。Stonesもボ・ディドリーのカヴァーを何曲か行っているが、スピード感ではYardbirdsの方が優れているというのはやや贔屓目にすぎるかもしれぬ。

"I'm not talking" Jeff Beckのギターを十二分に堪能できる作品。彼の得意とするロカビリー風の短いフレーズを繰り出す演奏は何度聴いても心地よい。既に70年代のソロ時代に完成される猫の鳴き声のようなフレーズが出来つつあるのが分かる作品である。後のフュージョン時代に繋がる作風に仕上がっている。

”My girl Sloopy” 当時アメリカで大ヒットしたポップスのカヴァーである。コーラスワークの腕も秀逸であるのが分かる曲。リヴァプール/マンチェスター出身のマージー・ビート系のグループに負けず劣らずロンドン出身のグループにも歌唱力に長けたグループがあるのを見せている。

”A certain girl” デビューシングルのB面にも収録された曲。個人的には"I wish you would"より好きである。全体的に荒削りでコーラスもこなれていない感じであるが、若々しくてよろし。Claptonの引きずるようなトーンのギターソロもインパクトが大きい。

"You're a better man than I" これまたJeff Beckのギターを存分に堪能できる作品である。囁く様なKeith Relfのヴォーカルとギターの鋭いソロとの対比が白眉である。Yardbirds時代の演奏の中でも1、2を争う演奏である。

”I'm talking about you” チャック・ベリーのオリジナルとして有名な曲。同時期にRolling Stonesもカヴァーしているが、ここはStonesに軍配を上げる所であろう。Yardbirdsのバージョンはどこか慌ただしく、安っぽい感じが否めない。

"Boom Boom" ジョン・リー・フッカーのオリジナルである。Animalsもカヴァーしており、これは甲乙付け難い所である。AnimalsのバージョンはEric Burdonの爆発力のあるヴォーカルも良いが、Keith Relfの囁く様な歌い方も洗練されていてなかなかの物である。

"I ain't done wrong" Jeff Beckのギターを存分に堪能できる作品第3弾。Yardbirdsの時代では最もハードかつ自由奔放にギターソロが飛び交っている感じが強烈である。ブルースハープとギターが絡み合う様な演奏は随一のものである。のちのハードロック/ヘヴィーメタルの時代でも決して遜色のない出来である。

"New York city blues" 後のCream,Led Zeppelinを彷彿とさせるルーズなR&B。渋い黒人風のリズム感とKeith Relfの細いヴォーカルが絶妙である。ギターも冴えている。R&BバンドとしてのYardbirdsはもっと評価されても良いと思うが、この手の曲が証明している。

"Stroll on" Jeff BeckJimmy Pageの「ツイン・リード」時代の貴重な楽曲。"The train kept a-rollin'"の改作である。Jimmy PageのZepに通じるハードなギターフレーズは秀逸。1966年の時点でこれだけの実力を蓄えていたのは驚きである。ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画「欲望」の中でサントラとしても取り上げられている。映画の中でもYardbirdsの演奏シーンが収録されており、Jeff Beckがギターを叩きつけるシーンを見せてくれる。