洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』 (The Yardbirds) '64

Yardbirdsの記念すべきデビューアルバム。当時の熱気が伝わる名盤である。


ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ+5ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ+5
(2002/03/21)
ザ・ヤードバーズ

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1964年3月、ロンドンのマーキー・クラブでのライヴを収録したものである。60年代初頭の荒削りで鋭い演奏が聴ける貴重な音源に仕上がっている。近年、この手の60年代初頭の歴史的な音源が再販されており、手頃な価格で購入できるようになっているのは嬉しい限りである。稀少なコレクターズ・アイテムとして高値で取引される事なく、多くの人が手に入れて聴けるようになっている現状は洋楽ファンとしては大変有り難い。

"Too Much Monkey Business"  オープニングはMCのメンバー紹介から。Eric Claptonを紹介する箇所で"〜Eric 'slow hand' Clapton"と、彼のゆったりした指さばきを表現した愛称を盛り込んでいるのがご愛嬌。演奏も切れがあって一変に引き込まれる魅力がある。既にCream時代に見られる様な音色の片鱗が見え隠れしている。ヴォーカルのKeith Relfもそれに呼応して張りのある所を見せている。

"Got Love If You Want It"  Keith Relfのブルース・ハープが印象的な2曲目。前曲と打って変わってClaptonのギターは淡々としたリズムを刻んでいる。同年代のグループではKinksが1stアルバムでこの曲をカヴァーしているが、演奏力、リズム感ではYardbirdsのバージョンと甲乙付け難い。YardbirdsはオーソドックスなR&Bで、Kinksはトリッキーな盛り上がり方をする所が面白い。

"Smokestack Lightning" ゆらゆらとしたリズムが心地よい名演奏。ClaptonのギターとKeith Relfのブルースハープの掛け合いが見物である。このライヴの中でも随一の出来だと思う。

"Good Morning Little Schoolgirl" スタジオ収録盤に比べてスピード感が異なる。ClaptonとベースのPaul Samwell-Smithの2人がリード・ヴォーカルである。Keith Relfの若干線の細いヴォーカルでは全編通すのはやや難があったのかもしれない。

"Respectable" Yardbirdsの特徴はリズムの軽快さにある。まさにこの曲が代表的である。同年代のStones,Kinks,Animalsと比べてR&Bの演奏に重苦しさ、黒人ぽい渋さが無い。その代わり、どの曲もアップテンポでダンスに向く様なノリの良さがある。マネージャーのジョルジォ・ゴメルスキーの戦略による所も大きい。

"Five Long Years" Yardbirdsには珍しい渋いブルース。Keith Relfの甲高い声とブルースハープの抜ける様な響きが印象的である。

"Pretty Girl" コーラスのかけ合いが秀逸なR&B調の曲である。

"Louise" Stonesを彷彿とさせるルーズなリズムの演奏。

"I'm a Man" 曲後半へ向かってのギターとブルースハープの盛り上がりはこのライヴのハイライトである。

"Here 'Tis" ライブのラストはスピード感溢れる逸品。ベース、ギターのリズムが入り乱れている感じが面白い。演奏は荒削りでも熱気がもの凄く伝わってくる。

ちなみに、オリジナル盤は全曲カヴァーという徹底ぶりである。この辺はKinksやWhoと異なり、R&Bに特化した戦略を取ったものと見られる。オリジナル曲が非常に少ない事がYardbirdsの評価を微妙にしているのは否めない。しかし、このライヴ盤はKinksの"ケルヴィン・ホール"やStoneの"Got Live If You Want it!"と並んで60年代の代表的なライブ演奏と言えるだろう。