洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『グッバイ・クリーム(Goodbye)』 (Cream) '69

Creamの僅か3年弱しか無かった活動期間の有終の美を飾るラストアルバム。


グッバイ・クリームグッバイ・クリーム
(2010/11/24)
クリーム

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Creamの活動期間は実質3年弱という非常に短いものであった。グループ結成時には3人とも既にJohn Mayall & Blues Breakers等を経て、名うてのミュージシャンであった事もあり、個性が際立っていたが故に意見のぶつかり合いが激しかったようである。特にベースのJack BruceとドラムのGinger Bakerの対立は激しく、実はバンド結成前から不仲であったそうである。Claptonも長期間にわたるライブ・スケジュールに嫌気がさしていたらしく、次第に意欲を失っていったのも解散の要因であった。この為、68年リリースの「クリームの素晴らしき世界」以降スタジオ収録の成果は芳しくなかった様で、このアルバムはスタジオ録音、ライブ音源それぞれ3曲のみという何とも寂しい布陣となってしまった。名グループのラストとしては非常に格好悪い幕引きとなってしまったが、それでも個々の曲の出来は優れており"Badge"のようなシングル向けのヒット曲もありプロフェッショナルとしての仕事を果たしている所は流石である。

"I'm So Glad","Politician","Sitting on Top of the World" 前半3曲はライブ録音。68年10月のロサンゼルスでの演奏を収録したものであるが、解散するのが惜しい出来である。ギター、ベース、ドラムの3者3様の秀逸な演奏は職人技の域に達している。"I'm So Glad"でのハードロックにアレンジされたClaptonのギタープレイは貴重である。対照的に"Politician","Sitting on Top of the World"でのゆったりしたブルースの渋さは完全に大物の風格があり、曲数の少なさをカバーしている。

"Badge" 後半のスタジオ演奏はメンバー3人がそれぞれ作曲したものを収録。Clapton作のこの曲はBeatlesGeorge Harrisonをギターに迎え演奏されたもの。「ホワイト・アルバム」にてClaptonがレコーディングに参加した返礼としてここではGeorgeがゲスト参加している。従来のCreamの曲と比べてブルース色は薄く、軽快な曲調に仕上がっている。後のDerek and the Dominosやソロ時代に似たの澄み切ったトーンのギターが特徴的である。曲長も3分足らずで、いかにもシングル用の曲といった感じでコンパクトな出来になっている。ライブの長尺なインプロヴィゼーションとは極めて対照的である。

"Doing That Scrapyard Thing" Jack Bruce作のピアノとオルガンの演奏が目立つポップな作品。彼もまた従来のブルースにとらわれない新たな試みを行っている所が興味深い。

"What a Bringdown" Ginger Baker作だが、ドラムはあまり全面にフィーチャーされていない所が面白い。ソロでの成果を目論んでいる為か軽快なポップス調に仕上がっている小品。

後半のメンバーオリジナル曲はいずれもブルースのカヴァーから離れ、次の時代を見据えた新たな試みを行っている所が共通している。70年代の洗練されたトーンの曲調、例えばキーボード等を多用して柔らかい雰囲気になっていく変化が見て取れる。優れたミュージシャンは時代の先を読むのも巧みであるのが分かる1枚である。