【音盤銘盤】『アフターマス』(The Rolling Stones) '66
全曲オリジナルで揃えた彼らのキャリアの上でターニングポイントとなるアルバム。曲のクオリティも数段レベルアップしているのが分かる。
UK盤
![]() | アフターマス (2002/08/27) ザ・ローリング・ストーンズ 商品詳細を見る |
US盤
![]() | アフターマス (2002/11/09) ザ・ローリング・ストーンズ 商品詳細を見る |
前々作『アウト・オブ・アワ・ヘッズ』、前作『ディッセンバーズ・チルドレン』でも書いたが、
この時期のストーンズ(他の多くのグループも同様だが)はUK盤とUS盤でジャケット写真も曲も異なるバージョンのものが制作されていた。
一部のコレクターにとっては非常に興味深いのであるが、ごく真っ当に曲を聴こうとすると煩雑この上ない。
正当に当時の音楽やミュージシャンの評価をする上ではむしろ邪魔になる可能性もあるのは、以前の投稿でも書いた通りである。
私wlblaboが持っているアルバムは20年程前に国内で流通していたUK盤(LONDONレコードレーベル)なので、そのラインナップを基準に紹介していく事にする。
”Mother's Little Helper” ドラッグをテーマにした社会風刺の色が濃く現れた曲。出だしからシリアスな歌詞の曲を持ってくる所にソングライターとしての彼ら(特にMick,Keith)の成長が窺える。
ギターの音色の歪ませ方もエキゾチックである。Brianの才能による所が大きい。
"Stupid Girl" Mick,Keithのsongwritingチームが腕をあげだしたのがこの曲でも分かる。コーラスの取り方が今迄と明らかに違うね。
"Lady Jane"のダルシマー、"Under My Thumb"のマリンバではBrianの多彩な演奏力が光る。グループの主導権がMick,Keithに移りつつあるのがちと悲しい。
"Goin' Home" 10分を超える大作。当時のアルバムでこれだけの長さの曲を収録したのは快挙、というより暴挙(?)に近いと思われる。お陰でこのアルバムの収録時間が1時間弱にもわたる事に。歌詞もある意味暴挙。
"Flight 505" Beatlesから"I wanna be your man"を提供された後、返礼として贈ったのがこの曲である。残念ながらBeatlesの演奏バージョンは存在しない。Beatles版も是非聴いてみたかった。
"Out Of Time" 初期ストーンズの集大成といえる曲。R&Bのカヴァーを自分達の中で消化した成果がよく表れている逸品である。個人的には隠れた名曲と認識している。ハモンドオルガンが心地よい。
"It's Not Easy","Think" R&Bカヴァーを丹念に続けた成果がこれらの曲にもにじみ出ている。21世紀の今聴いてもちっとも色褪せていない。
"I am Waiting","Take It or Leave It" 一聴すると、現代の尖ったイメージのストーンズには似つかわしくないソフトなバラードである。しかし、初期のストーンズには意外とこの手のセンチな感じの傑作も多く、なかなか隅に置けない。("As tears go by"とか)
このアルバムのあたりから作詞作曲ができるMick,Keithの存在感が増していくことになる。
グループ結成当初のリーダーであったBrianはシタールやダルシマーなどの楽器演奏で多彩な才能を発揮しているが、このアルバム以降自らのアルコールやらドラッグやらの問題とも相まって次第に影響力を失っていく、
そのターニングポイントとなるストーンズ史の中でも極めて重要なアルバムである。
個人的には邦題のアルバム名は直訳で"余波"としたほうが良かったのではないかと思う今日この頃。