洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『ビトゥイーン・ザ・バトンズ』(The Rolling Stones) '67

サイケデリック・ムーブメント、コンセプト・アルバム、フォーク・ロック等、当時の流行に影響を受けながら試行錯誤して制作されたアルバム。R&Bのカヴァーグループから脱却しつつある印象。


ビトゥイーン・ザ・バトンズビトゥイーン・ザ・バトンズ
(2013/02/20)
ザ・ローリング・ストーンズ

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御多分に洩れず、このアルバムもUK盤とUS盤とで曲目が異なる。私が所有しているバージョンがUS盤なので、これを基準に書く事にする。

US盤は"Let's Spend The Night Together"から始まる。曲名と歌詞に物言いがついて発売当初は全米のラジオ局で放送禁止になったのは有名な話である。この程度で放送禁止になるとはずいぶんアメリカものどかだったなあと思うのは私だけではあるまい。

エド・サリバン・ショーで収録されたバージョンは歌詞が"Let's Spend Sometime Together"に変えさせられていたのが印象的である。私が中学生くらいの時にNHKで放映されていたのを見た事があるが、Mickが歌っている時の視線の動きが半端無く不自然な感じであった。(あらぬ方向へ目線をギョロつかせて、睨みつけるような風情であった。)自らの曲の歌詞を変えさせられて歌うのは余程不本意な事であったに違いない。

ちなみにこの曲の邦題は「夜をぶっとばせ」。この時代の邦題はなかなか洒落たものが多い。"Get Off My Cloud"が「一人ぼっちの世界」、"As Tears Go By"が「涙あふれて」、"Sympathy For The Devil"が「悪魔を憐れむ歌」。近頃は日本のレーベルがこういった粋な邦題を付けないのは少々残念な気がするが、如何なものだろうか?

"Ruby Tuesday" この時期のストーンズはサイケやらフォークやらの影響から逃れられなかったのが分かる1曲。エド・サリバン・ショーの映像でKeithがピアノを弾く体(てい)で映っていたのを思い出す。何だか挙動不審な感じでソワソワしてたのが印象的であった。

"Yesterday's Papers","Connection","Cool, Calm And Collected","My Obsession" これらの曲を聴いているとストーンズが何か方向性に迷っている感が露骨に出ている。時代の流れに飲まれてどこか浮き足立っている気がするのは私だけではない(はず?)。いま振り返って聴いてみるとストーンズも時代の影響から無関係ではいられなかった事が分かってなんだか微笑ましい。

"She Smiled Sweetly","Who's Been Sleeping Here" 迷走の根源はBob DylanにあるのはMickの歌い方を聴けば明らかだなぁ。ちょっと愛おしい。

"All Sold Out","Miss Amanda Jones"このアルバムのストーンズは全体的にポップだが例外的に従来のR&B的なのがこの曲。隠れた名曲だと思う。ギターの音色がサイケデリックに変わりつつある。

"Something Happened To Me Yesterday" Keithがリード・ヴォーカルの、当アルバム唯一の曲。サイケ以前の、のどかな雰囲気が漂う曲。

このアルバム、全体的な印象が散漫なのは否めない。しかしストーンズがR&Bをベースにしながら様々なジャンルの音楽を如何に自分達の中に取り込んでいくか、その工程が分かる所に価値があるんじゃないかと思う。

70年代に入ってからもカントリー、ソウル、レゲエ、パンクなど様々な流行りの音楽を貪欲に取り込んで進化し続けた所を見ると、このアルバムの見る目も変わってくる筈である。なかなか貴重な1枚。