洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『リトル・ゲームス』 (The Yardbirds) '67

Jimmy Page時代の唯一のスタジオ収録盤。Led Zeppelinへの布石となる一枚。


リトル・ゲームスリトル・ゲームス
(2005/08/03)
ヤードバーズ、ザ・ヤードバーズ

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Jeff Beckは前作"Roger The Engineer"以降僅かなJimmy Pageとの「ツイン・リード」時代を経て脱退。67年に入ると完全にJimmy Page主導の体制となり、ハード・ロック指向を強めていく。その時代の中で制作されたのがこのアルバムである。

"Little Games" ポップ調のこの時期らしい小品からこのアルバムは始まる。この手の曲を聴いているとKeith RelfのヴォーカルはR&B系の渋い曲よりもフォーク風の軽いテンポの方が合っているのが分かる。Jimmy PageLed Zeppelinへ「発展的解消」をしていったのもそれなりに理由がある気がする。

"Smile on Me" Jimmy Pageのギターが冴える逸品。ハード・ロック時代を見据えた作りが見えるのが興味深い。私見だがThe Whoの1stアルバム"My Generation"に収録されていたインストゥルメンタル"The Ox"にギターのリフが似ている気がするのは私だけだろうか。

"White Summer" Jimmy Page作の中東風のエキゾチックなトーンのインストゥルメンタル。Zeppelin時代にもレパートリーに入れられていたので、相当なお気に入りであったと見える。彼のギターさばきは既に完成されたものになっているのが凄い所である。セッションミュージシャンの経験の長さを窺う事ができる1曲。

"Tinker, Tailor, Soldier, Sailor" ギターは完全にZeppelinのカラーに仕上がっているのが見て取れるナンバー。67年らしくサイケデリックな装飾が施されてるのも聴いていて楽しい。

"Glimpses" 初期のClapton時代から御馴染みのグレゴリオ聖歌風のコーラスとPageの弓弾きのコラボ。既にギターをヴァイオリンの弓で弾くアイデアを実現していたのは画期的と言える。ここはもっと評価されるべき所である。

"Drinking Muddy Water" ブルース界の大御所、マディー・ウォーターの"Rollin' and Tumblin'"を改作した曲。ClaptonがCream時代に基本に忠実なスタイルで演奏していたのと比べると、Pageがなんともゆる〜く、くだけた感じで演奏しているのが対照的である。洋服に喩えるならClaptonの演奏は極めて全うな正装であり、これに対してPageの演奏はかなり着崩した雰囲気があると言って良いだろう。2人のブルースに対する認識の違いがはっきり表れている。

"No Excess Baggage" Jeff Beck時代に通じる軽快なポップナンバー。コーラスが印象的。

"Stealing Stealing" 効果音やブルースハープをあしらった小品である。Pageのハードロック指向とは対照的なRelf-McCartyの好みが反映された作品。

"Only the Black Rose" アコースティック・ギターのキラキラしたトーンが心地よい曲。Relfのフォーク指向が全面に表れている。

"Little Soldier Boy" イギリスの寓話をモチーフにした軽快なナンバー。Kinksの曲作りにも通じる長閑なノリの曲である。オリジナル・アルバム収録はここまで。

"Goodnight Sweet Josephine" 現在はリイシュー盤のアルバムに収録されているが、当時はシングルで発売された曲。この手の曲を聴いているとYardbirdsがやはりイギリスのグループである事が分かる。アメリカのR&Bに影響を受けながらも、メンバーの気質はイギリスそのものであるのが音楽に表れている。モンティ・パイソンの"Always Look on the Bright Side of Life"にも通じる、どこかユーモラスな雰囲気は何にも代え難い。

"Ha Ha Said the Clown" これも当時シングルで発売された曲。ティンパニのアクセントが印象的である。当時のポップ指向が垣間見える逸品。

"Think About It" この時期のYardbirdsはシングル指向が強かったと見受けられる。これもシングルとして発売されたもの。この曲はライヴでもよく取り上げられていて、PageのギターはZeppelinのトーンに染まっている。Zeppelinの1st辺りに収録されていてもおかしくない仕上がりである。

Yardbirdsの公式リリースのアルバムは実質的にこれが最後である。この67年の頃はベースのPaul Samwell-Smithが脱退した為、Chris Drejaがベースに転向したりとメンバーの入れ替わりの激しさは相変わらずであった。しかし、音楽的には非常に多産な時期でYouTubeなんかにもこの時期の演奏は比較的アップされているのが嬉しい所。