【音盤銘盤】『ターン・ターン・ターン』 (Byrds) '65
全米ヒットチャートで1位を記録したタイトル曲と共に、フォーク・ロックの集大成と言えるアルバム。
前作"Mr. Tambourine Man"のヒットに続いて1年も経たないうちに制作された2ndアルバム。全体的にフォーク調の地味なトーンで彩られているが、要所要所で飽きさせない工夫が施されている一枚。
"Turn! Turn! Turn! (To Everything There is a Season)" Bob Dylanの先輩格にあたるフォーク・シンガーPete Seegerが取り上げた曲。
"It Won't Be Wrong" Roger McGuinnによりオリジナル曲。既にサイケデリックを予見しているかのような歪んだ音色のリズムが印象的。
"Set You Free This Time" Gene Clarkの作。終盤に挟み込まれるブルース・ハープのアレンジが聴いていて心地よい。
"Lay Down Your Weary Tune" Byrdsのお家芸、Bob Dylanのカヴァー。ゆったり感満載の曲調が良い。
"He Was a Friend of Mine" トラディショナル曲にRogerが歌詞とアレンジを施した小品。同時期のS&G(Simon & Garfunkel)に通じるアコースティックのナンバー。
"The World Turns All Around Her","Satisfied Mind","If You're Gone" 暫くGene Clarkの作のナンバーやカヴァー曲が続く。単調なリズムながらも、コーラスが手堅く、実力を表している。
"The Times They Are a-Changin'" オリジナルのBob Dylanでも名曲とされる秀逸なメッセージソング。「時代は変わる」の邦題でも有名である。社会の変革期を象徴する様な歌詞は現在にも通じる思想みたいなものが流れている。Dylanのオリジナルに比べると曲調は淡々としており、思いがけなくあっさり終わってしまう感じが何だか物足りない気もする。
"Wait and See" Roger,David Crosbyの作。終盤のストリングス風のギター・ソロがアクセントになっている。
"Oh! Susannah" トラディショナル曲をもう一度取り上げている。原曲はバンジョーで演奏されていたものだが、12弦ギターの響きも優れている。
1stと比べてタイトル曲"Turn! Turn! Turn!"を除くとインパクトのある曲は少なく、曲名を見てもすぐにはメロディーが思い浮かばない曲が多いのがこのアルバムの特徴である。全体的にリズムが単調で似たトーンの曲が多いのが惜しい。前作のヒットに併せてアルバムを作成した為か、オリジナル曲をあまり収録できず、カヴァーやトラディショナル系の曲で埋め合わせして演奏に腐心している様が何ともいじらしい。しかし、この時代のフォーク・ロックを代表するアルバムである事は変わりない名作と言える。