洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『昨日より若く』 (Byrds) '67

ロックグループとして完成の域に達した4枚目のアルバム。バーズのキャリアにおいて折り返し地点に来た時代の一枚。

The Byrds 昨日よりも若く

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1964年にデビューして約3年で4枚目のアルバム。同世代の数多くのグループの中では順調に実績を残してきたグループである。本作では既に手練の演奏・作曲センスを見せてくれる。

このブログを書くにあたって、久しぶりに聴いてみると意外な発見があった。1967年というサイケデリック・ムーヴメント真っ只中にありながら、煌びやかな装飾を施したアレンジが思ったより少ないという事である。所々にテープの逆回転の効果音をかぶせたりと実験的な事をやっているのだが、極端にけばけばしい演出、芝居がかった華やかな展開は無く、割と淡々とした作りなのである。デビュー当初から続くフォーク・ロックから軸足をずらしていない一方で、既に70年代のカントリー・ロックを先取りするかのような曲も有り、時代の流行にどっぷりはまっているという感じが無い。これはByrdsを語る上で無視できない要素だと思う。

"So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star" ロックの華やかさとは裏腹に業界の下世話な商売臭さを端的に歌詞に表現している所が心憎い。しかし、曲自体は極めて軽快で後半に観客の歓声を効果音としてかぶせたりと細かい芸を聴かせてくれる逸品。

"Have You Seen Her Face" ベースのChris Hillmanの作。オープニングの斬り込むように入ってくるギターが渋く、格好良い。Rogerのギタリストとして腕の見せ所である。全体の曲調はリアルタイムでバーズを聴いた事の無いような日本人でもどこか懐かしさを感じさせる、不思議なトーンである。この曲を初めて聴いたのは24才の頃、社会人になって2年目位の時であったが、妙に郷愁を感じる印象的な曲だったのを覚えている。本アルバム"Younger Than Yesterday"をよく聴いていた頃に学生時代の同級生と久しぶりに飲んだせいもあり、この曲を聴くと大学生の頃に戻った気分になる。

"C.T.A.-102" いかにも67年の時代の流行に乗っている感じが曲に表れている。宇宙をテーマにした曲であり、途中から宇宙人を模した機械的な甲高い声やノイズが挟み込まれたりと、遊び心のある出来になっている。

"Renaissance Fair" David Crosby, Jim McGuinnによる共作。コーラスにしろギターのフレージングにしても4枚のアルバムを通して洗練されているのが分かる。

"Time Between" Chris Hillmanによる優れた小品。Beatlesの"For Sale"あたりのカントリー調のフレーズに非常に良く似たノリの曲。短いながらも完成度の高いナンバー。

"Everybody's Been Burned" David Crosbyの単独作である。繊細なトーンのギターが何とも愛おしい隠れた名曲。Crosbyの出世作とも言える。

"Thoughts and Words" Chris Hillmanの傑作。サイケデリック時代を象徴するような幻想的なトーンの効果音が印象的。テープの逆回転等、実験的な取り組みを行っている。

"Mind Gardens" これもDavid Crosbyの手による曲。12弦ギターの演奏をレコーディング後、テープを逆回転させてシタール風にしてみせたりと、この時代らしい細かい仕事ぶりが聴けて興味深い。

"My Back Pages" このアルバム唯一のカヴァー曲。久しぶりにBob Dylanの曲を取り上げる。オリジナルに比べて非常に洗練されたものになっており、演奏力・歌唱力の上達がはっきりと分かる出来である。後年のライブでもよく取り上げられたので、彼らもお気に入りであったのだろう。

"The Girl with No Name" カントリー風のフレーズが新鮮な軽快な逸品。これもChris Hillmanの作である。バーズ後期のカントリー路線を先取りするかのような出来。

"Why" このアルバム随一の傑作である。Rogerのお家芸と言える12弦ギターの倍音が心地よい。

従来作詞・作曲面で中心的だったRoger McGuinnによる曲は少なくなり、他メンバー、David Crosby、Chris Hillmanの単独作が目立つ様になってきたのが特徴的な所だろうか。この辺りの流れはBeatlesなんかとよく似ている。初期はJohnとPaulの共作が多く、中盤辺りからPaul、そしてGeorgeによる単独作がちらほら出だす過程は共通するところである。従ってアルバムの曲構成も多彩で充実したものになっている。軽快なポップス調のものから、バラード寄りのものとか、カントリー系のものまで幅広いジャンルの曲が揃っている。