【音盤銘盤】『バーズ博士とハイド氏』 (Byrds) '69
メンバーチェンジが進んで新たなラインナップとなったByrds後期の佳作。カントリー、R&B等、様々なバックグラウンドの要素を盛り込んだアルバム。
Byrdsがリリースしたオリジナルアルバムは11枚。この"Dr. Byrds & Mr. Hyde"で7枚目であるので、キャリアとして丁度折り返し地点を過ぎた辺りとなる。
このアルバム収録当時のメンバーは以下の通り。
・Roger McGuinn - guitar, lead vocals
・Clarence White - guitar, backing vocals
・John York - electric bass, backing vocals
・Gene Parsons - drums, harmonica, banjo, backing vocals
前作で多大な貢献をしたGram Parsonsは本作を待たずにあっさりと脱退、デビュー当初からのメンバーであったChris Hillmanもとうとう辞めてしまう。これでオリジナル・メンバーはRoger McGuinnのみとなってしまい、新たなメンバーを加入して新生バーズとしてこのアルバムを出す事になる。
アルバム全体の曲調は、前作"Sweetheart of the Rodeo"のカントリーミュージック流れを残しているものの、新メンバーClarence Whiteのギターを全面に出しているせいかR&B、ハードロックの影響も色濃く出ているのが特徴的。
全体的に地味な印象がある様で、数あるByrdsのアルバムの中でもあまり注目される事は無い。個人的にもこのアルバムを聴いた当初は重苦しいトーンでByrdsらしくない印象を持っていたが、当時のライヴ盤を聴く様になると、このアルバムで取り上げられている"This Wheel's on Fire"、"Nashville West"、"Old Blue"が巧みなアレンジで演奏されていることが分かり、評価が一変した。スタジオ収録の本作と比べて、アップテンポで軽快な仕上がりになっているのには驚いた。
"This Wheel's on Fire" Bob DylanのカヴァーはByrdsのお家芸とも言える域に達している。ハードロックの時代を反映してファズトーンの聴いたギターが渋くて格好よい。
"Old Blue" 前作までの流れを汲むカントリーのtraditional曲。Rogerのアレンジ力が優れている。
"Your Gentle Way of Loving Me" これはカントリーのカヴァー。ブルースハープと細くて高いトーンのギターが心地よい。Stonesの"Sticky fingers"辺りへの影響も大きいと思われる。
"Nashville West” 新メンバーClarence White、Gene Parsonsによるインストゥルメンタル。ライヴでは軽快かつスピード感溢れる仕上がりに変貌している。
"Drug Store Truck Drivin' Man" Roger McGuinnと前作1枚で脱退したGram Parsonsの共作。Gram Parsonsの置き土産の様な作品である。