洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『(タイトルのないアルバム)』 (Byrds) '70

ライヴ演奏とスタジオ・レコーディングの2枚組として当時発売。盛りだくさんな仕上がりの9作目であり、Byrds後期の傑作アルバム。

The Byrds (タイトルのないアルバム)

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60年代も後半に入ると2枚組アルバムの傑作が目立つ様になる。Beatlesの"The Beatles(通称「ホワイト・アルバム」)"、Jimi Hendrixの"Electric Ladyland"しかり、Creamの"Wheels of Fire(クリームの素晴らしき世界)"などといった大作がロック界の中心に台頭することになる。今回紹介する"(Untitled)"もこれらの傑作アルバムにひけを取らないレベルに出来上がっている。

個人的にはByrdsの中でも最高傑作に相当する作品と認識しているものであり、60年代後半〜70年代にかけてのロックミュージックの中で「もっと評価されて良い」アルバムである。

当時のメンバーは次の通り。

・Roger McGuinn - guitar, Moog synthesizer, vocals

・Clarence White - guitar, mandolin, vocals

・Skip Battin - electric bass, vocals

・Gene Parsons - drums, guitar, harmonica, vocals

<1枚目ーライヴ演奏>

"Lover of the Bayou" Roger McGuinn,Clarence Whiteの2人で奏でられるギターのアンサンブルとスピード感のあるリズムが印象的。従来のByrdsにないハード・ロック寄りの荒削りなトーンでいきなり引き込んでゆく。

"Positively 4th Street" 御馴染みBob Dylanのカヴァーである。普段のスタジオ収録と比べてスピード感がある。ギターの音色も軽やかである。

"Nashville West" "Dr. Byrds & Mr. Hyde"でも収録されたGene Parsons, Clarence Whiteによるインストゥルメンタル。ライヴという事もあり、スピード感・迫力とも格段に異なる。

"So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star","Mr. Tambourine Man","Mr. Spaceman","Eight Miles High" 初期の傑作をたたみかけるようにして演奏されるのは圧巻。この一連のラインナップは是非アルバムを購入して聴いてほしいところ。

<2枚目ースタジオ演奏>

"Chestnut Mare" スタジオ盤1曲目。後期Byrdsの傑作とも言えるフォークロック。初期からの流れを汲む澄み切ったトーンは秀逸である。

"Truck Stop Girl" フォーク、カントリーが渾然一体となった長閑な隠れた名曲。Byrdsの創作センスのピークに達した作品。

"All the Things" Gram Personsとの共演が無ければこの手の曲は作られる事は無かったであろう名作。

"Yesterday's Train" 夕暮れ時を思わせる茫洋とした曲調が印象的。ヴォーカルのGene Parsons(もしくはSkip Battinか)の哀愁のある歌い方も切なくて良い。

"Just a Season" Roger McGuinn作の小品。細やかなトーンのギターの音色はライヴと極めて対照的である。

このアルバム、1枚目のライヴ盤は当時流行のハードロック・R&Bの影響を受けたハードでアップテンポな曲調に仕上がっているのと対照的に、2枚目のスタジオ収録はフォーク・カントリーといった内省的なトーンの曲が集まっている。ライヴに初期のヒット曲を多く取り入れたり、スタジオ盤ではRoger以外のメンバーにヴォーカルと任せたりと飽きさせない工夫を凝らしているのが分かる。

このアルバムが発表された1970年はBeatlesが解散、Rolling Stonesがメンバーチェンジやら移籍問題のゴタゴタ等でロック界全体が慌ただしい年であった所為もあり、腰を据えて音楽そのものに向かい合うにはあまり良い年ではなかったのかもしれない。それ故に様々な話題に埋もれてしまった感のある惜しい一枚である。