洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

【音盤銘盤】『ファーザー・アロング』 (Byrds) '71

Byrdsのオリジナル・アルバムはこれでラスト。軽快なアメリカン・ポップで大団円を迎える。

The Byrds ファーザー・アロング

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"Mr. Tambourine Man"のデビュー以来、6年余りの活動でByrdsはとうとう解散となってしまう。ラストアルバムがこの"Farther Along"である。

全体的な曲調は軽快かつシンプルな昔ながらのロックンロールが多く、最後の作品にしては呆気ない終わり方をする所が特徴的な所か。

"Tiffany Queen" 彼らのデビュー以前にあたる50年代風の軽快なR&Rでアルバムは始まる。Chuck Berryを彷彿とさせるギターのリズムはいつ聴いても心地よい。個人的にはByrdsの中でも1,2を争う程好きな曲である。

"Get Down Your Line" ドラムのGene Parsonsによる作曲・ヴォーカルの作品。ブルース・ハープを使った粋な演出がこの時代らしい。CCRにも通づるアメリカ南部の泥臭い感じが渋くて良い。

"Bugler" マンドリンを全面にフィーチャーして澄み切ったトーンに仕上がっているのが特徴的な逸品。この曲を聴いていると革新的な取り組みをしていた60年代のByrdsが凄く遠く感じられる。

"America's Great National Pastime" 典型的なアメリカ人の生活スタイルやら趣味指向を風刺したシンプルかつアップテンポな佳曲。自分達の周囲の生活感を短い曲の中で的確にまとめるスタイルはイギリスの国民的グループ、The Kinksにも共通している。グループのファン層が重なっているのも理解できる。

"Lazy Waters" ベースのSkip Battinがヴォーカルの黄昏れたカントリー調の小品。ブルースハープがここでも活躍する。

Byrdsといえば「Bob Dylanのカヴァー」という印象が強いが、このアルバムでは1曲も収録されていないという事に改めて気づいた。グループ活動の終盤に入ると各メンバーの作詞・作曲の力量も増え、オリジナル曲が充実している事が分かる。

このアルバムリリース後の73年にByrdsは正式に解散する事になる。Beatlesは既に解散し、時代はLed Zepplin,Deep Purpleの様なハードロックが台頭する中で60年代の看板を掲げて活動する事にリーダー格のRoger McGuinnも無理を感じていたのかもしれない。しかし、アメリカのロック界の中で革新的な取り組みをして、アルバムごとに常に新しい取り組みを続けたグループもそう無いと思う。60年代を代表するアメリカのグループとして未だに高い評価を受けているのも当然かもしれぬ。