洋楽好きの音盤銘盤

やっぱり洋楽は60年代が格好良い

『みなもと太郎の「風雲児たち」展』開催

明けましておめでとうございます。本年も「洋楽好きの音盤銘盤」をよろしくお願いします。

今回は趣向を変えて、とある漫画についての展示会の模様について書きます。

みなもと太郎の「風雲児たち」展』が江東区清澄白河の深川江戸資料館で開かれているので、行ってきました。

今日は作者のみなもと太郎先生の講演会もあったのですが、残念ながら満員御礼でこちらは入れなかったものの、展示の方は十分満喫出来ました。

連載当初の原画、コミケ本の展示の他 深川の居酒屋所蔵の幕末志士の名を連ねた掛軸など江戸の歴史にゆかりのある品が盛りだくさんです。

幕末の有力人物の多くが下町、現在の江東区近辺で生まれ育ったり、生活していたのは意外な発見でした。

●『みなもと太郎の「風雲児たち」展』

http://fuunji.net/kawaraban/kawaraban384.html

●深川江戸資料館 前景

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●パンフ諸々

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この「風雲児たち」という漫画、1979年に連載が開始されて現在まで30年以上にわたって続いている「知る人ぞ知る」ロングセラーです。この漫画を筆者が初めて知ったのは5年程前だったのですが、幕末のストーリーを描くにあたって関ヶ原の戦いから展開させていく作者の視点の広さ、そして随所に散りばめられている機智に富んだギャグによっていつ読んでも飽きさせない構成となっています。

おかげで、それ以来単行本を買い揃え、現在では最新巻が出る度にほぼ発売日に購入してしまう位の熱心な読者(ファンと書くにはちょっとおこがましい気がする。。)となってしまいました。

漫画「風雲児たち」

作者のみなもと先生はプロの漫画家でありながら、コミケに参加する等、精力的に活動されている方です。近年はコミケ本の単行本化も進んでおり、より多くの人に歴史を知ってもらおうと日々努力されております。

【音盤銘盤】『アニマル・トラックス』 (Animals) '65

オリジナルメンバーによるAnimalsのラストアルバム。R&Bのカヴァーが優れた名盤。

The Animals アニマル・トラックス

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英国のミュージシャンによるR&Bのカヴァーは60年代初頭においてある種流行のようになっていた。AnimalsはヴォーカルのEric Burdonとピアノ&オルガンのAlan Priceによるアンサンブルが極めて秀逸であったが、その他のグループも数多くのカヴァー曲を取り上げている。

1stアルバムで取り上げた"She said yeh","Around and around"はRolling Stonesもカヴァー、"Boom boom"はYardbirdsがカヴァーしている。本作の"I ain't got you"はYardbirds、"Roadrunner"はPretty Thingsがカヴァーしている。その他にも当時はアルバムに収録されなかったシングルカット曲、

"Don't let me be misunderstood"は後年、Elvis Costelloによってもカヴァーされる等、R&Bカヴァーの系譜は長く続いていく事になる。

このように同年代の中で(曲によっては後年に亘って)数多くの作品がカヴァーされるようになると、各々のグループの間で「聴き比べ」なるものをしてみるのも一興である。

グループによって得意な声質、演奏形態が異なるのでカヴァーの出来上がりも優劣様々あるのが、なかなか面白い。

例えば今回紹介したAnimalsであればなんといっても迫力あるヴォーカルとキーボードの構成が魅力的であるし、Rolling Stonesであれば、Mick Jaggerによる張りのあるヴォーカルとKeith RichardsのChuck Berry譲りのストレートなギター、Brian Jonesの哀愁あるブルースハープの演奏が見事である。

Yardbirdsならば、Keith Relfの線の細いヴォーカルに加えてEric Clapton,Jeff Beckといった名ギタリストによる多彩なフレージングが何より聴き所である。

"Hallelujah I Love Her So" ヴォーカルとキーボードの掛け合いが秀逸な名作。

"Don't let me be misunderstood" 「朝日のあたる家」に続く大ヒットシングル。60年代らしい郷愁を感じさせる一曲。

ヒット曲が続き前途洋々に見えたAnimalsであるが、Alan Priceの突然の脱退によりオリジナルメンバーによるアルバムは僅か2枚である。これ以降もEric Burdonを中心としてグループはメンバーチェンジを重ねながら続いていくことになる。後の作品はまた別の機会に紹介したいと思う。

【音盤銘盤】『アニマルズ』 (Animals) '64

ブリティッシュロックで随一のR&Bグループ、Animalsの1stアルバム。渋好み・通好みの1枚。

The Animals アニマルズ

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Byrdsのアルバム紹介がほぼ終わったので、ここから暫くブリティッシュ系の様々なグループを取り上げてみる。今回紹介するのはThe Animalsである。アニマルズというと"The House Of The Rising Sun「朝日のあたる家」"がなんといっても超有名曲である。この曲は60年代の、というよりイギリスの歌謡界において歴史に残る大作と言える。この為、つい「あの、『朝日のあたる家』で御馴染みの・・・」といった評価ばかりになってしまいがちであるが、その他にもR&Bの名演奏を数多く残している。

当時のメンバーは以下の通りである。

・Eric Burdon - vocals

・Chas Chandler - bass

Alan Price - keyboards

・John Steel - drums

・Hilton Valentine - guitar

メンバーの出身地はイングランド北東部のニューキャッスルという所である。地理に詳しい方なら知っていると思うが、付近には炭坑や鉄鉱石の産地が多い地域である。日本で言えば室蘭や釜石みたいな所だろうか。Animalsの音楽も地域性を反映してか全体的に重苦しい、非常に荒削りなトーンの曲調のものが多い。

Chas Chandlerは後年、Jimi Hendrixのマネージャーとなり彼を見い出して世に出す事になるのは有名なエピソードである。

"The House Of The Rising Sun" Animalsの歴史的大作。ヴォーカルのEric Burdonの絶叫に近い歌い方が強烈なインパクトを残す。

"Boom Boom" オリジナルはアメリカの名ブルースマンジョン・リー・フッカーの作。Yardbirdsもこの曲のカヴァーを残しているが、Animasの方が数段出来が良い。

60年代当初においてAnimalsのEric BurdonほどR&Bの持つ「重苦しさ」「ワイルドさ」に近づこうとしたアーティストはいないであろう。殆ど絶叫に近い歌い方をして声を嗄らしながら歌う事でブラックミュージック、そして黒人そのものの本質に迫ろうとした稀有なミュージシャンである。

【音盤銘盤】『ライヴ・アット・ザ・フィルモア 1969』 (Byrds)

近年になって発売された初のフル・ライヴアルバム。掘り出し物とでも言うべき貴重な音源である。

The Byrds ライヴ・アット・ザ・フィルモア-1969

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Byrdsは現役で活動していた時代に『(タイトルのないアルバム)』というライブ盤を残している。(しかし、スタジオ収録とライヴ盤の2枚組。)

ライヴ盤単体でのリリースは、2000年に発表されたこの"Live at the Filmore"が初めての事である。収録は1969年2月、サンフランシスコの"フィルモア・ウェスト"で行われた。当時最新のオリジナルアルバムは"Dr. Byrds & Mr. Hyde『バーズ博士とハイド氏』"にあたるので、このアルバムから取り上げられた曲が多い。

このライヴ当時のメンバーは以下の通り。

・Roger McGuinn - guitar, lead vocals

・Clarence White - guitar, backing vocals

・John York - electric bass, backing vocals

・Gene Parsons - drums, harmonica, banjo, backing vocals

この時代のByrdsはリーダー格のRoger McGuinn以外は既にスタジオ等のセッションで実力のある、腕の立つミュージシャンが揃っており優れた演奏を聴く事ができる。これだけの優れた演奏が30年以上も日の目を見る事なく見過ごされていたのは大変勿体ない。Byrdsに限らず60〜70年代に活動したミュージシャンのライヴで秀逸な音源がまだまだ有りそうな気がしてならない。かつて活躍したアーティストの音源がディスク数枚組のBOXセットで「未発表音源」として豪華な装丁でリリースされる事があるが、あの手の売り方ではなかなか手が出にくいのではなかろうか。もう少し安い価格で1枚ずつ売る方法も有るのではないかと考えることもたびたびである。

まぁ、それはさておきこの"Live at the Filmore"の聴き所はRoger McGuinnとClarence Whiteの2人のギタリストによる時にぶつかり合い、時に重なり合うギターのアンサンブルに尽きると思う。冒頭の"Nashville West"といい、メドレーで演奏される"Mr. Tambourine Man"や"Eight Miles High"、後半の"So You Want to Be a Rock 'n' Roll Star"などスタジオ収録盤とは全く様相の異なる演奏を呈している。どれも本来はフォーク調のゆったりした曲だったものが、躍動感のある仕上がりに変貌している。

【音盤銘盤】『ファーザー・アロング』 (Byrds) '71

Byrdsのオリジナル・アルバムはこれでラスト。軽快なアメリカン・ポップで大団円を迎える。

The Byrds ファーザー・アロング

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"Mr. Tambourine Man"のデビュー以来、6年余りの活動でByrdsはとうとう解散となってしまう。ラストアルバムがこの"Farther Along"である。

全体的な曲調は軽快かつシンプルな昔ながらのロックンロールが多く、最後の作品にしては呆気ない終わり方をする所が特徴的な所か。

"Tiffany Queen" 彼らのデビュー以前にあたる50年代風の軽快なR&Rでアルバムは始まる。Chuck Berryを彷彿とさせるギターのリズムはいつ聴いても心地よい。個人的にはByrdsの中でも1,2を争う程好きな曲である。

"Get Down Your Line" ドラムのGene Parsonsによる作曲・ヴォーカルの作品。ブルース・ハープを使った粋な演出がこの時代らしい。CCRにも通づるアメリカ南部の泥臭い感じが渋くて良い。

"Bugler" マンドリンを全面にフィーチャーして澄み切ったトーンに仕上がっているのが特徴的な逸品。この曲を聴いていると革新的な取り組みをしていた60年代のByrdsが凄く遠く感じられる。

"America's Great National Pastime" 典型的なアメリカ人の生活スタイルやら趣味指向を風刺したシンプルかつアップテンポな佳曲。自分達の周囲の生活感を短い曲の中で的確にまとめるスタイルはイギリスの国民的グループ、The Kinksにも共通している。グループのファン層が重なっているのも理解できる。

"Lazy Waters" ベースのSkip Battinがヴォーカルの黄昏れたカントリー調の小品。ブルースハープがここでも活躍する。

Byrdsといえば「Bob Dylanのカヴァー」という印象が強いが、このアルバムでは1曲も収録されていないという事に改めて気づいた。グループ活動の終盤に入ると各メンバーの作詞・作曲の力量も増え、オリジナル曲が充実している事が分かる。

このアルバムリリース後の73年にByrdsは正式に解散する事になる。Beatlesは既に解散し、時代はLed Zepplin,Deep Purpleの様なハードロックが台頭する中で60年代の看板を掲げて活動する事にリーダー格のRoger McGuinnも無理を感じていたのかもしれない。しかし、アメリカのロック界の中で革新的な取り組みをして、アルバムごとに常に新しい取り組みを続けたグループもそう無いと思う。60年代を代表するアメリカのグループとして未だに高い評価を受けているのも当然かもしれぬ。